運動能力の土台づくりと発達性協調運動障害
子どもの不器用さや運動の苦手は、生まれてからの成長過程においてそれぞれのステージで形成される「運動能力の土台づくり」と「姿勢の発達」に関連付けて考えることが出来ます。
子どもが運動や遊び、学習を習得するためには様々な力や感覚の発達が必要と言われています。活動する際に適した姿勢を保つための筋力や姿勢を保つバランスなどの基礎的な力、すなわち「土台」づくりが重要となります。また同時に、自分の体の大きさや動かし方などのボディイメージの発達が必要であり、自分が動いた時に感じる皮膚や筋肉、関節からの感覚を無意識に上手く処理する必要があります。それぞれの感覚の受け取り方が上手く出来ない場合には、いくら練習しても適切なボディイメージがあわずに上手に運動をしたり遊んだりすることが難しくなってしまいますので、生まれてから成長する過程において形成される「運動能力の土台づくり」と「姿勢の発達」の説明とそれらの能力を遊びながら身につける「感覚運動あそび」のご紹介をします。
また稀に、本来自然と身につく協調運動能力が生まれながら低かったり成長しても本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確であったり、困難である場合があります。感覚運動あそび等を取り組んでも症状の改善が見られない場合は発達性協調運動障害の可能性もありますあので、専門医や専門機関に相談してみましょう。
運動を行うための機能の発達について
ヒトは生まれてから様々な行動を起こす際に、運動機能・認知機能・感覚機能によって活動を行っています。運動に関連する主な感覚は、目から入力される「視覚」・皮膚が刺激されて得られる情報の「触覚」・体の揺れや回転などの情報の「前庭覚」・筋肉の伸び縮みの情報である「固有覚」があります。これらの感覚から得られた情報を上手く統合・制御して体を動かしています。近年の研究で、子どもの成長に伴う姿勢の発達程度が運動の不器用さと関連していること、姿勢の発達に伴い手指の機能も高まることが報告されており、姿勢の発達は、「見る力」「話す力」「考える力」の土台になっていると言っても過言ではありません。
子どもの活動の様子が気になる場合は「感覚運動あそび」にトライしてみましょう。
お子さまに上記のような症状が見られる場合は、運動の土台づくりをサポートする「感覚運動あそび」に取り組むと改善が見られる場合があります。ここではご家庭でも簡単に行える「感覚運動あそび」を動画でご紹介します。ご家庭で簡単に行えますので親子・兄弟姉妹で取り組んでみてください。
ただ手先が不器用、練習不足で運動が苦手?なだけじゃないかもしれません。
本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確であったり、困難である場合は、お子さまが発達性協調運動障害かもしれません。発達性協調運動障害とは、日常生活における協調運動(手と手、手と足、手と目など個別の動きを同時に行う運動)が、困難であるという発達障害の一つです。例えば、キャッチボールが苦手だったり、日常生活の中でつまずく物がないのによく転んでしまったり、ボタンをかけるのが苦手だったりするというようにこれまでは過保護な育て方や練習不足、運動不足が原因と思われていたり理由がわからないまま対応に苦慮されたりしたケースが、実は、発達障害のひとつである「発達性協調運動障害」である可能性が近年知られるようになりました。
発達性協調運動障害のあるある子どもは、乳幼児期のハイハイ、お座りなどが上手く出来ないなど運動発達の遅れが見られる傾向にあります。しかし、子どもによっては乳幼児期には遅れや苦手はなかったが、幼稚園や小学校に行くころから、ボタンをはめたりヒモを結んだり、字を書いたりすることが顕著に苦手となる場合もあります。また、発達性協調運動障害は、見てわかる行動面の症状のみならず認知面にも問題があることがわかっています。自分の体の動きをイメージすることが苦手だったり、タイミングをはかったり、強さ弱さや速さ遅さなどの力加減の調整が苦手だったり、注意力がなかったりする場合があります。人は目で見た情報や知覚からえた情報を脳内で処理してから体を意識・無意識にかかわらずコントロールして動かしていますが、発達性協調運動障害をもつ子どもは情報を脳内処理する過程で問題があることが知られています。
発達性協調運動障害をもつ子どもの早期支援の重要性
発達性協調運動障害をもつ子どもは、就学後に体育や習字、音楽演奏、図工学習などに影響が出るケースがほとんどです。しかし、年齢が低ければ低いほど不器用さや苦手は運動は子どもによって個人差があります。しかし、極端に体の使い方が不自然だったり、不器用であったりした場合は、当事者の子どもの将来の就学や就労時のハンディキャップを軽減する可能性がありますのでなるべく早く専門医に相談・受診することをおすすめします。保護者の自己診断で判断することは決してせず、その子に適した対処法や支援を知るためにも、まずは専門機関や専門医に相談するようにしましょう。
●専門機関の相談先
- お住まいの地域の保険センター・子育て支援センター・児童デイサービスにお問合せください。
- 発達障害支援センター(外部サイト:発達障害情報・支援センターのページへ)
- 発達障害診療医師名簿(外部サイト:日本賞に神経学会のページへ)